当のサガとカノンは、自分達の誕生日のことなどすっかり忘れていた。
今日も今日とて、教皇代理として忙しいサガの元へ意外な人物が現れた。
『う・・・なんだこの威厳のある小宇宙は!?・・・・以前にも感じたことのあるような・・・・はっ!あ、あなたは・・・・まさか!?』
その人物に驚愕するサガ、そうそれは・・・・
『久しぶりだな、私を殺した張本人、ジェミニのサガよ』
『あ・・あなたは・・・・シオン教皇!?』
なんと、それはサガ自らがその手にかけた、前教皇シオンだったのだ。
『フッ、なにもそんなに驚くこともなかろう?』
『い、いや・・・しかし!なぜシオン教皇が今更になって、このサガの前へと・・・・?』
『ふ、それは当然、私を殺したお前を呪い殺すため・・・・というのは冗談で、今日1日だけ、また教皇になりたくてな、戻ってきたのだ』
『1日だけ教皇になりに戻ってこられたのですか!?』
『そうだ、悪いか?』
『い、いえ、ですが・・・なんでまた、今日1日なんですか?』
『ふん、それは・・・・今日が特別な日だからに決まっておろう?』
『・・・え?』
『なんだ?やはり忘れておったか?そういえば、昔からお前はそうだったな、職務に没頭するあまり、他のことに気付かぬ、そんなところもあったな』
『・・・・・・』
『今日は、このシオンの命を奪った奴の生誕の記念すべき日であろう?そんな大事な日のことすら忘れておるのだからな』
『・・・っは!?』
『やっと思い出したようだの、ほらそうと分かれば教皇の職務など、このシオンに任せて、お前は早くアテナ神殿へ行くがよい、皆が首を長くしてお前たち双子が来るのを待っておるぞ!』
『・・・シ、シオン教皇・・・・・』
『さあ、なにをぐずぐずしておる?早くゆかぬか!』
『は、はい!・・・ありがとうございます!!教皇!!』
早速サガは、シオンに深く頭を下げると、皆が待ってるアテナ神殿へと向かった。
一方カノンは、海底神殿にいた・・・・
その時、突如テティスが血相変えて飛び込んできた。
『た、大変です、シードラゴン様!冥界から繋がり眉毛の大男が、あなたに会いに、この海底神殿に乗り込んできましたあ!!』
『なにい!?繋がり眉毛・・・ラダマンティスか!?あの野郎、性懲りも無くこんなところまで来やがったか!?あんな奴、海闘士総動員して追い払え!!』
『でも、それが、大きな荷物を抱えて、ぜひこれをシードラゴン様にお渡ししたいと言ってきかないのです』
『荷物?』
『はい、いかがいたしましょうか?』
『うーん・・・・・しょうがねえな、その荷物ってのも気になるし、会ってみるか?』
『お会いになられるのですね?分かりました』
そして、カノンの元にラダマンティスが通された。
『おい、ラダマンティス、俺に渡したいものがあるそうだな?一体なんだよ?』
『ああ、カノンよ。今日はお前の誕生日ではないか!だから誕生日プレゼントを持ってきたのだ』
『なに?誕生日!?・・・そういや、そうだったな!すっかり忘れていたぜ!』
『カノン、誕生日おめでとう!』
『あ、ああ・・・ありがとな』
ラダマンティスが渡してきた大きなプレゼントを、照れくさそうに受け取るカノン。
『それにしても、やけにでかいな。一体なにが入ってるんだ?』
その、等身大もあろうかという、ラダマンティスのプレゼントの中身が非常に気になるカノンだったが、
『ふふ、開けてみるがいい』
ラダマンティスに促され、カノンがプレゼントを開けてみると、中には・・・
『おい!なんだよ、カラじゃねえか!?なんにも入ってねえぞ!?』
そう、プレゼントの中はからっぽだったのだ。
だが、ラダマンティスは自分を指差しこう言った。
『いや、プレゼントは確かにあるぞ、私だ!』
なんと、ラダマンティスのカノンへのプレゼントは、ラダマンティス自身だったのだ。だが・・
『てめえなんざいらねえ!!!!』
カノンにあっさり拒絶されてしまった。
『なぜだ、カノン!?私では不服か!?』
『不服もなにも、なんでお前なんだよ!?』
『それは・・・私がカノンの側にずっといたいか・・・・』
『ゴールデン・トライアングル!!!』
ラダマンティスの台詞(愛の告白?)を途中で遮るように、いきなり技を放つカノン。
だが、ラダマンティスには効かなかった。
『カノンよ、いきなりなにをする!?』
『うるせえ!なんで効かねえんだよ!?くそ、こうなったら!ギャラクシアン・エクスプロージョン!!!』
またもや、ラダマンティスに技をかけるカノンだが、ラダマンティスもさすがにこれには抗えなかったようだ。
そして、星々の砕け散る様をその身で体感して、死にかけのラダマンティス。
『おい!、テティス、こんな奴、そのバカでかい箱に詰めて冥界に返品してこい!!もちろんノシ付けてな!!』
カノンはテティスそう命じた。
『は、分かりました。シードラゴン様』
テティスが両手を、ぱんぱんと叩くと、海闘士たちが現れ、またたくまにラダマンティスを捕らえると、箱に詰めてしまった。
カノンは、それを見て満足そうに頷くと、ふと思い出したかのように呟いた。
『そうだ、今日が俺の誕生日だということは、聖域でも、毎年恒例の黄金聖闘士誕生日会を開いてるはずだ!俺もこうしちゃおれねえ!さっそく聖域に行くぞ!』
と、聖域へと向かった。
そして、ここは聖域・アテナ神殿。
そこでは、アテナと黄金聖闘士たちが、サガとカノンが来るのを今か今かと待っていた。
『遅いですね、2人共、一体なにをしているのかしら?』
アテナが心配そうに呟いた。
その時!
『遅れて申し訳ございませんでした。アテナ!』
サガが急いで来たように、アテナ神殿に飛び込んできた。
『まあ、サガ、そんなに急がなくてもよかったですのに』
『いえ、アテナをお待たせさせる訳にはまいりません!』
『もう、サガは真面目なのですから。あとはカノンが来れば、主役は揃いますね!』
『え?カノンはまだ来ていないのですか?』
『ええ、でももうすぐ来ると思いますよ』
とその時!
『悪りい、遅れちまったな!』
カノンも到着した。
『遅いぞ、カノン!今までなにをしていたのだ?』
『いや、ラダマンティスのやつと色々あってよ・・・それより、今日は俺たちの誕生日会なんだろ?』
『ええ、そうですよ!それで皆で、あなたちが来るのを待っていたのです』
アテナに言われ見ると、確かに大きなテーブルには、黄金聖闘士たちや、なぜか星矢たち青銅聖闘士の4人も座っていた。
『老師・・・アイオロス・・・、それに、星矢たちまで、来てくれたのか!?』
まさに黄金聖闘士が勢揃いしている、今だかつてない光景に、思わず感動するサガ。
『よ!サガ、久しぶりだな!』
アイオロスは、そんなサガの側にいき、肩を叩いた。
『アイオロス・・・お前まで・・・私たちの誕生日を、祝いに来てくれたのか?』
『当たり前だろ!俺とお前は友達じゃないか!』
『・・・・アイオロス・・・あの時は、本当にすまなかったな・・・お前にアテナ誘拐の反逆者の汚名をかけてしまい・・・・』
『いいって、気にするなよ。もう昔のことだ。それより今日は、お前たちの誕生日だろ!もっと楽しくやろうな!』
『そうだぜ、サガ。アイオロスだってこう言ってるんだ。せっかくの俺たちの誕生日なんだからよ、そんな辛気臭い顔すんなよ!』
『カノンの言う通りですよ、サガ。さあ、席に着いて、楽しく過ごしましょうね!』
『・・・はい、アテナ』
こうして、サガもカノンも、みんな席に着き、誕生日会が開かれた。
テーブルには、イタリア料理・中華料理・フランス料理など、まさに豪華フルコースの食事が運ばれてきた。
『これはみんな、俺たちが作ったんだぜ!』
とデスマスクは得意そうにサガに言った。
『そうか、それはありがたいな』
サガがあんまり素直に頷くものだから、デスマスクもつい拍子抜けした。
『サガのやつ、やけに素直だな、どうしたんだ?』
シュラがそれに答えた。
『なに、あのサガも、今日ばかりは素直に感動しているんだろ?なにせ、黄金聖闘士勢揃いだからな』
こうして、皆それぞれ好きに座り、宴が始まった。
アイオロスは、サガとシュラとアイオリアに囲まれて、困っていた。
『アイオロス・・・やはり私を恨んでいるのだろう・・・?正直に言ってくれ!』
『・・・アイオロスよ・・・あなたを半殺しの目に遭わせて・・・・すまなかった!許してくれ!』
とサガとシュラはしきりに彼に謝りまくりだし。
『兄さん・・・・会いたかった!』
アイオリアも、兄に会えたのが嬉しいのか、彼の側を離れようとしない。
『おいおい、お前たち・・・・』
アイオロスも、絡んでくる3人に、ほとほと困り果てていた。
ムーとシャカとアフロディーテは、マイペースに優雅にティータイムを過ごしているし、
ミロは氷河と、カミュ争奪戦を繰り広げているし、
デスマスクとカノンは、星矢と瞬相手に、しきりに絡んでくるし、
アルデバランと老師と紫龍は、まったり茶を飲み交わしているし、
まるっきり、サガとカノンの誕生会というよりは、ただの宴会の様相を呈していた。
これではいけないと、アテナは皆に言った。
『皆さん、今日はサガとカノンの誕生日なのですよ!2人にプレゼントをしようではありませんか!』
と、ミロとカミュ、ムーとシャカに目配せをした。
それまで、優雅に茶を啜っていたムーとシャカも、ミロとカミュも、ようやく思い出したかのように立ち上がって、サガとカノンの前へとプレゼントを運んできた。
『サガとカノンよ、誕生日おめでとう!君たちにはこれを』
と、カミュとミロは、宝石店で買ってきた、お揃いの双子座のリングをプレゼントした。
『ありがとう』
『わりいな!』
サガとカノンは照れくさそうにしながらも、カミュとミロのプレゼントを受け取った。
ムウは、カノンに真珠のネックレスをプレゼントした。
『双子座の誕生石は真珠と聞きましたからね、それにあなたは元・海将軍のシードラゴン。まさに海繋がりでぴったりだと思ったのですよ、ふふふ』
『ああ・・・すまねえな、ムウ・・・・』
海闘士の頃のことを言われ、これは皮肉か嫌がらせか?と思いながらも、ムウのプレゼントを大人しく受け取るカノン。
『サガ、あなたには、これを・・・』
と、シャカがサガに差し出したのは、お風呂セットだった。
『サガは風呂好きだからな、これで心置きなくたっぷりと入浴するがよい』
『あ、ああ、ありがとう、シャカ・・・』
サガは苦笑しながらも、シャカのプレゼントを受け取った。
そして無事?プレゼントも渡し終わると、みんなが拍手した。
『サガ、カノン、お誕生日おめでとうございます!これからも、私・アテナを、そして聖域を宜しくお願いしますね!』
「「は、お任せください、アテナ!」」
サガとカノンがアテナに応えた。
『うふふ、頼もしいですわ!』
アテナも満足そうに頷いた。
『それでは皆さん、今日は彼らの誕生日を祝いまして、今夜は無礼講です!思う存分楽しみましょう!』
こうしてサガとカノンの誕生日は、無事何事もなく続いたという。
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あとがき
かなり遅れてしまいましたが、双子誕の続きです。
サガとカノン、お誕生日おめでとう!
来年の双子誕も、よろしくお願いしますね! |
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