Crazy for you

あの、アテナの聖闘士と、ヒルダの神闘士たちとの激しい戦いの末・・・・
星矢たち、アテナの青銅聖闘士たちの活躍により、無事ヒルダを正気に戻すことができた。
それから、ヒルダの温かな慈愛に満ちた小宇宙と、女神アテナの大いなる加護と祝福により、戦いで死んでいった神闘士たちは無事、全員生き返ることができた。

そして、元の生活に戻るもの。ワルハラ宮に残り、変わらずヒルダの側に仕えるもの、などなど、皆それぞれの生活に戻っていった。
そして、ここにもまた、そんな双子の兄弟がいた。

「・・・兄さん、これからどうするつもりですか?」
2人ともそっくりで、とても傍目には見分けはつかなかったが、それでもその身にまとう雰囲気はまったく別のものだった。
そんな2人の内、気品に満ちた、優しそうな雰囲気の男が、もう1人の、野性的で、鋭い雰囲気の男に聞いていた。
「そうだな・・・また、森での狩りの生活に戻るつもりだ」
野性的な男、兄・バドの方は、遠くのアスガルドの森の方に視線を投げつつ、呟いた。
「・・・・そうですか・・・・」
なぜか残念そうにつぶやく紳士的な男、弟・シド。
そして意を決っしたように、こう切り出した。
「もし、兄さんさえよければ、俺のところに来ませんか?、父さんも母さんも、きっと兄さんに逢いたがっています」
いまさら、自分を捨てた実の両親の顔など見たくはない
そう、兄が言うかもしれないと不安に思いつつも、弟は思い切って切り出してみたのだが、果たして兄の返答は・・・・?
シドが固唾を飲んで、兄の言葉を待つ。
そんな弟の不安をよそにバドは
「・・・そうだな。それもいいかもしれない・・・・」
と、事も無げに呟いた。
「本当ですか、兄さん!?」
断られるかもしれないと、覚悟を決めていただけに、この兄の言葉に嬉しさを隠しきれない様子のシド。
「ああ、俺を捨てた両親の面もぜひ拝んでみたいしな・・・」
「え?」
「冗談だよ、」
「は・・はは・・・そうですよね・・・・」

冗談なのか本気なのか分からない兄の台詞に多少気おされながらも、シドはバドが家に来てくれることが嬉しかった。

こうして兄・バドは、弟・シドの家へと行くことになった。

初めて観る自分の生まれたであろうお屋敷に、バドは驚きを隠せなかった。
「お、シドの家ってこんなにでかいのか!?だったらお前の兄である俺も・・・実はお坊ちゃんだったんだな・・・・」
「そうですね^^」
バドが自分の豪華な家を観て思わず驚愕している様が、なぜかかわいく思えて、シドはにっこり微笑んだ。

それから玄関に入ると・・・
そこには身なりのいい上品な物腰の中年の男女がいた。
おそらく彼らが、シドの、そしてバドの実の両親なのだろう。
「父上、母上、ただいま。そしてこちらが、改めて紹介するよ・・・・」
シドがバドを両親に紹介(?)するまでもなく、もちろん両親はバドのことをしっかりと憶えていた。
「お、おお!我が息子・バドよ!またお前にこうして逢えるとは・・・・父は・・・父は・・・・嬉しいぞお!!!」
いきなりバドをガシッと抱きしめる、恐らくバドの実の父であろう男性に、バドは呆然としながらも、受け止めた。
「あなた!バドを独り占めするなんてヒドイですわ!!ああ、バド!私のかわいい子・・・さあ、こっちへいらっしゃい!!!」
今度はバドの母であろう女性が、父らしき男性をバドから引っぺがし、抱きついてきた。
これにもタジタジになるバド。
「うん、うん・・・3人ともよかったですね・・・・(ホロリ)」
そんな両親とバドとの涙(?)の再会を、同じく涙を流しなら、側で見ているシド。
「おお、母さん、いきなりなにをする!?」
バド母からバドを奪われ、抗議の声を上げるバド父に
「うるさいわね!!バドは私がお腹を痛めて産んだかわいい我が子なのよ!ただ仕込むだけのあなたと違って、わたくしのバドへの想いはただならぬものなのよ!!お分かり!?」
「いや、お分かり・・・と言われても・・・・一応私もバドの父親な訳だし、とうぜんバドのことは目に入れても痛くないと想っておる!」
「嘘おっしゃいな!!だったらなぜ、この子たちが生まれた時に、あなたはバドをわたくしやシドから引き剥がし、1人、極寒の冷風の吹きすさぶ森の中になど捨てに行ったのよ!?」
「あ、あれは仕方がなかったんだ!!ああしなければ、この家は潰れてしまうとこだったのだ!!」
「じゃあ、あなたは、お家を守る為には、我が子をも捨てたということね!!」
「そういう母さんこそ、あの時、なにもせずに寝ていたではないか!!」
「まあ!!あれはお産直後で疲れて果てて動けなかっただけですわ!!でなければ、すぐにでもバドを探しに、連れ戻しに行くつもりでしたのに!!」
なにやらバドを挟んで、いきなり夫婦喧嘩バージョンに突入するバド父とバド母。
それを唖然と見ているバドと、なぜか目を合わせないようにしているシド。
とりあえずシドは、バカ喧嘩を始めた両親を放っておいて、バドを屋敷内に案内することにした。
「と、とりあえず、兄さん。館の中を案内しますよ。着いてきてください」
「あ・・ああ・・・」
バドはシドに案内されるまま、今だなにやら口喧嘩をしている両親であろう人たちを横目に、玄関から中に入った。
そこは、外から見た印象とまったく違い違わずに、広大な、立派で、豪華なお屋敷だった。
今まで森での貧しいボロ屋で過ごしてきたバドにとって、そこはまさに夢のような世界だった。
雨風もちゃんと凌いでくれるし、隙間風など決して入ってはこない頑丈な造りの立派な屋敷だ。
長い廊下を歩き、バドが物珍しそうに、あたりの装飾品に目をやる様を、微笑ましく見ているシド。
(・・・やっぱり、兄さんってかわいいな・・・・)
そんなシドの生温かい、いやある意味熱視線にも通じるような視線にも気づかないのか、気にしていないか、とにかくバドにとっては全てが珍しくて仕方なかった。
そこで一通り廊下を行くと、ある1つのトビラの前で足を止めるシド。
「ん?どうした、シド?」
「兄さん、ここがあなたのお部屋です」
どうやらそこはバドに当てがわれたらしい部屋だった。
「・・・どうぞ」
シドが意味深な笑みと共にトビラを開けてバドを室内へと誘う。
多少緊張しながらも、部屋に足を踏み入れたバドがそこで見たものとは・・・!?
なんと!!
バドの隠し撮り写真やら、バド愛用の品々、バドの使用済みアイテムなどなど、いろんなバドグッズがそこには溢れていた。
いわばこの部屋はバドの部屋ではなくて、バドのお宝グッズ展示室のようだ。
「なっ!なんだこれは!?」
あまりのその光景に思わず蒼白になるバド。
そういえば、心当たりがあったのだ。
いつの頃からか頻繁に、自分の持ち物がなくなっていることに。
当時はきっと森の動物たちのイタズラかなんかだろうと、さして気にもしていなかったのだが・・・
よもや、このような結果で紛失物の行方が判明しようとは!
なんだか知らない方がよかった事実に、バドは気づいてしまったのだ。
そんな蒼白になるバドを尻目に、なぜかトビラに鍵を掛けるシド。
ガチャ!
その物音に気づいて、バドがシドを見た。
シドは・・・バドをじっと正面から見返しているが、その目は真剣そのものだ。
「兄さん・・・・」
「な・・・なんだよ・・・?」
なんだかシドのただならぬ小宇宙(?)に、なぜか身の危険を感じるバド。
「やっと、こうして2人きりになれましたね・・・・」
「そ、そうだな・・・・・」
確かにここにはバドとシドの2人きりだ。
ここはシド(と両親)の館だから、他の神闘士たちはよほどのことがない限りは、誰も入ってはこないだろう。
いわば、ここはシド(と両親)とバドが唯一2人きりになれる閉ざされた空間なのだ。
いや、シドにとってはまさしくバドと2人だけになれる、この世の楽園・パラダイスかもしれない。
いくら叫ぼうが、喚こうが、誰も助けには来てくれないのだ。

そう、バドを好きにできる・・・・
今なら誰も2人の邪魔をする者はいない!
シドがじりじりとバドに迫る。
それに合わせて後退するバド。
と、足元のなにかにつまずき、バドは思わずコケそうになったが、慌てて体勢を立て直す。
なぜかここでコケたり、倒れてはいけないと、そう本能が告げていたのだ。
そしてバドが足元を見ると・・・なんと!
そこには布団が地面に敷かれていた。
なんでこんな洋風のお屋敷に、なぜかお布団がベットではなく、地面に直接敷いてあるのかは謎だが。
そしてさらに見てはいけないものを見てしまったバド。
なんと、そのお布団の周りには、累々たるバドグッズが散乱していたが、
恐らくそこでシドはバドグッズをおかずに、ナ二かしていたとは容易に想像がついた。
「シ・・・シド・・・・これは一体・・・!?」
バドが恐る恐るシドに聞いてみると、彼は多少恥じらいを見せて呟いた。
「だって、兄さんに逢えなくて寂しいから・・・・この部屋にいるといつでも兄さんと一緒にいられるようで安心なんですよ」
「だから、ここで寝泊りしていたのか・・・?」
「はい・・・ずっと兄さんと一緒にいたいから・・・・」
「で・・・・」
と、バドはお布団の周りにあるバドグッズを指差して
「これは・・・一体何に使っていたんだ・・・・?」
と聞いてみた。
シドは、多少うつむき、頬を染めて呟いた・・・・
「・・・・そんなこと・・・・聞かないでください・・・・v」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「分かった。もう聞かないよ。その代わり・・・・早くこの部屋から出してくれ!!」
「そうはいきません!こうしてやっと本人に巡り会えたのですから、もう離しませんよ!!」
ガバッ!
「うわっ!?」
バドはシドに抱きしめられた!
「うわあ!離せ!!」
「兄さん!逢いたかったあvv」
そのまま、シドのもの凄いバカ力で布団の上に押し倒されるバド。
「ってえ!なにしやがる!?」
「兄さん!1人寝の夜は寂しかったです。でもこうして兄さんが側にいてくれるのなら・・・シドは・・・シドは・・・・幸せです!!」
「わ、て・・・お前・・・どこ触ってんだよ!?」
いきなりシドに襲われてしまったバド!
どうなる!?
どうする!?
バド!

・・・以下、裏に続きます・・・(本当かよ!?)

あとがき

広川さんに捧げますvどうぞ受け取ってください!
・・・・て、どこがバドミーメやねん!?
まんまシドバドじゃん!?
と、お怒りのことと存知ますが、大丈夫ですよ。ちゃんと続きもありますから^^
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