もしもシリーズ
もしもあの人が学生になったら・・・
(良家の坊ちゃん編)
 
 
−もしもシリーズ もしもあの人が学生になったら・・・・・良家の坊ちゃん編−
 
※I・IIキャラとIIIキャラ及びIVキャラの年齢差は気にしない。気にしてはいけない。気にしたら貴方はソウルイーターの餌食になるだろう。
 
 
デュナン湖の北西にある森林地帯。その森林と平野の境界にある大都市グリンヒル。嘗てはジョウストン都市同盟加盟都市の一つだったグリンヒル市国も今やデュナン国の一員となったが、だからと言って市民達の生活が変わったわけでもなく、いつもと変わらぬ日々を送っていた。
そんなある日の事、一人の少年が懐かしそうにこの町を訪れた。
 
「・・・・・変わらないな、ここも。」
 
赤い服を着て手には棍棒を持ち、長い髪を束ねるかのごとくバンダナを巻いているこの少年は、市内の大通りを真っ直ぐ進み、ニューリーフ学院の校門の前に立った。
 
「・・・・・。」
 
彼は門の前であの時の事を思い出していた。
あれからどれくらい経つだろうか、ハイランド王国によってこの町が占領されていたときに、彼はデュナン軍リーダー率いる工作部隊の一員としてこの町に乗り込んだ。
彼はこの校門で待ち伏せていた王国兵を斬り捨てた。校門は血で赤く染まった。彼の手も、また。だがそれが戦争だった。仕方なかった。それは統一戦争の三年前に集結した門の紋章戦争で経験済みだった。
 
「・・・・・時の流れってのは、早いもんだね・・・・・。」
 
己が右手に宿す呪いの紋章、これに苦しめられながらも、彼は何とか理性を保ってきた。
そんな昔の事を思い出しながら、彼は校門を抜け、校舎の中へと入っていった。受難が待ち受けているとも知らずに・・・。
 
 
「・・・・・はーい!みなさーん、今日はー!!!」
「いえーーーー!!!」
 
それから一時間ほど経った。彼は何故か学院の教室の前に立っていた。教室の中は異様な盛り上がりを見せている。
衣装もいつの間にか緑のブレザーに灰色のズボンに変わっている。棍棒は行方不明、帯びていたはずの剣までなくなっている。
 
「今日は転校生を紹介したいと思います。わーぱちぱちぱち。」
「いえーーーーー!!!」
「それでは早速行ってみよー!ハイ!」
「いえーーーーー!!!」
 
彼は一人気まずくなりつつ、教室のドアを開けた。
 
(・・・・・ついていけるかな。)
 
そして彼は絶句した。
 
「いえーーーーー!!!」
「バンダナ外せ!制服には似合わねーよ!!!」
「・・・・・萌え。」
「あ、あはははは・・・・・。」
 
教室にいた生徒達。それは彼の部下と仲間、更には元敵までいた。
 
「・・・・・先生、これは一体どーゆー事ですか?」
 
顔は笑っているが目が笑っていない。右手が黒く光り出した。
だが教師はうろたえる事無く言い返した。
 
「こういう事です。」
「いやそうじゃなくて・・・・・。」
「御不満でも?良家出身で熊男に拉致され年上の美女に調教され、部下にストーカーされ、更には同盟国の盟主と常に一緒に行動して事が終わった途端帰ってしまったマクドール家御当主様。」
「誤解を招くような表現をするな!大体何だ『調教』って!」
「おやぁ、先生にそんな事言っていいんですか?」
 
少年は一瞬顔が引き攣った。
 
「っ・・・・、先生、そんな事言っていいんですか?使いますよ?ソウルイーター。」
「いいですよ。使って下さい。目の前にいるお仲間が巻き添えになるでしょうけど。それで満足したら自己紹介をして下さい。」
「うっ・・・・・運が良かったな。今日は紋章の調子が悪いみたいだ。」
 
全員から「自己紹介しろよ」とつっこまれたのはお約束である。
 
「・・・・・分かりましたよ。やればいいんでしょやれば。」
 
彼は溜息をついて渋々自己紹介をした。もう皆知っているはずなのに。
 
「・・・まだ言い足りないんじゃないの?」
「聞きたいことが山ほどあるんですけど・・・。」
 
元々性悪の少年魔術師、そしてその兄をはじめ、『少年達』が彼を質問攻めにした。
ただでさえ引き攣っていた表情が更に引き攣り、いつしか強張っていった。
 
「先生・・・・・、あいつらを黙らせてくれませんか?」
「何故?彼らの質問に答えてあげればいいじゃない。」
「答えたくもない事に答えてあげるほど出来た人間じゃないですから。」
「成績に響くとしても?」
「だから何?僕はもうグレッグミンスターの学校を卒業してるんだ。成績なんて知ったこっちゃないね。」
「そうですか。でもグリンヒルのニューリーフ学院といったら知らぬ者はいない名門校ですよ。そんなところで成績不振で退学したなんて言って御覧なさい。
御家の地位が失墜しますよ。父上から受け継がれた御家の名誉を毀損してもいいのですか?」
「・・・・・成績を餌に生徒を釣らせるとは教師の片隅にもおけないクズですね。」
「除籍処分でもいいですよ。『品位の欠片もない当主』の汚名を一生背負うことになりますが。」
「くっ・・・・鬼畜め。」
 
がっくり肩を落とした彼は、これ以上口答えするのを諦め、ぶっきら棒に部下を呼んだ。
 
「・・・・・はいそこの緑の性悪魔導師。」
「何か言った?ボンボンの世間知らずリーダー。」
「聞きたい事があるんじゃないの?甘ったれた理想で世界を壊そうとした魔術師君。」
「大したこともしてない君の何を知れというのさ。僕は周りの空気を読んでやって発言を促してやったまでさ。」
「そういうのを『余計なお世話』って言うんだよ。」
「僕が損するわけじゃないし。さっさとしてよね。」
「お前が言いだしっぺだろうが。・・・埒が明かないよまったく。もういいよ。次。そこの輪っか。」
「わ、輪っかって・・・。」
 
『輪っか』こと元デュナン軍リーダーはいつもと違う解放軍盟主に半ば怖気づいていた。
 
「輪っかだから輪っかなんだよ。」
「あの・・・・・僕は手を挙げてない・・・・・。」
「いいから何でも聞きなよ。」
「・・・・・天牙棍と剣はどうなさったのですか?」
「没収されたよ。後で返すように言いに行く。返さなかったら戦争だ。」
「え、ちょ・・・。」
「嘘だよ。次。青い神官将。」
 
青い神官将ササライは教室の中だというのにティーカップに注がれた紅茶を飲んでいた。
 
「随分ご機嫌が悪いようで。お茶でも飲まれて落ち着かれては如何ですか?」
「ああそうだね。見っとも無いよはっきり言って。誰かさんのお陰で自棄になってるだけだからね。もうないね。はい終わり。先生、席は何処?」
 
教師は不気味な笑顔を作って指をさした。
少年はまた溜息をつき、その席に座った。
 
「やあ弟。姉御は元気かい?」
 
少年は何かを悟ったような表情をしていた。
 
「え、えぇ・・・。」
 
同盟軍リーダーはもはや適当に答える事しか出来なかった。
 
「元気も何も、真ん中辺りで寝てるのが姉ですけど・・・・・。」
 
少年が目を凝らすと、確かに自分の少し前の席でぐーすか寝ている少女の姿があった。
これにはそれまでぶっきら棒だった少年も思わず笑った。
 
「そこ、静かに。」
 
不意に教師からチョークが飛んできた。
 
「・・・甘い。」
 
だがそこは戦場、そしてモンスターとの戦闘で動体視力を鍛えた少年。難なく交わし、哀れ投げられたチョークは床に粉々になってその役目を終えた。
 
「・・・可愛くないね。童顔なのに。」
「余計なお世話です。」
 
『童顔』の一言に彼はムッとした。いくら『坊ちゃん』と呼ばれているからと言っても、もう一家の主。
いつまでも子ども扱いされるのが癪に障った。
 
「隙あり!」
 
再び教師が別のチョークを投げた。
 
「・・・・・。」
 
今度は避けなかった。その代わりに右手で取った。今度はチョークも不本意な形でその役目を終える事はなかった。
が、それも束の間の事だった。投げられたその白い物体は投げた者の元へ勢いよく返され、砕け散った。
 
「まだやりますか?」
「な、なかなかやるじゃないですか。今日はこれくらいで勘弁してあげます。」
「よく言うよ。」
 
波乱万丈(?)の幕開けとなった学園生活。
何故か生徒達は知り合いばかりのこの学園での奇妙な物語が今、始まった。・・・・・すぐ終わるかもね。
 
 
 
キャスト
 
良家の坊ちゃん:I主人公
輪っか少年:II主人公
姉:ナナミ
性悪魔術師:ルック
青い神官将:ササライ
教師:まだ誰にするかは不明・・・・・。とりあえず解放軍メンバーを想定。
その他大勢:IIキャラ多数
 
 
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