シドとフェンリル


シドとフェンリル
第一章

もうすぐバレンタインデー。
この日、シドの部屋には、珍しくフェンリルが遊びに来ていた。
「なあ、シド。バレンタインの日、なにか予定・・・あるのか?」
机に向かってなにやら執務しているシドに、フェンリルは唐突に聞いてみた。
「・・・?、いや、別にないが・・・・」
「ホントか!だっ、だったら、お、俺と・・・・」
「俺と・・・・?」
「いっ、一緒に・・・・す、すご、過ごしてくれないか!?」
フェンリル、一世一代の大勝負に出た。
果たしてシドの返答は・・・・?

シドはそんなフェンリルにフッと優しく微笑むと、

「フェンリル・・・こっちにおいで」
と、優しく手招きする。
「え?・・・なに?」

フェンリルは内心ドギマギしっぱなしだった。
「ほら、こんなに身体が冷たくなってる・・・・俺が温めてやろうか?」
「・・・へ?」
肩に手をかけて自分の方に引き寄せてくるシドに、フェンリルの心拍数は急上昇!
「いや、あの、俺、そういうこと、初めてだから!」
「ん?」
「あ、だから・・その・・・よく、分からないんだ・・・・」
「・・・・」
「お、俺・・・こうして人に抱きしめられたことなかったから・・・すっげえ緊張してる!」
「大丈夫だよフェンリル。なにもしないから心配しないで」
「え・・・」
「ほら、こうして肌と肌で触れ合うと、とても暖かいだろう?」
「そ、そうだな・・・・」
シドがフェンリルの手をとって、それを両手で挟みこむようにすると、シドの体温が、直接フェンリルに伝わってきた。
「わあ、人肌ってこんなに温かいものなんだな・・・」
「そうだよ、フェンリル」
フェンリルは、初めて感じる人肌の温かさに、素直に感激した。
「俺、知らなかったよ。今までギングたちと一緒に生活してきて、人のぬくもりなんか知らなかったけど、こんなにも温かいんだな・・・」
シドは、そんな素直なフェンリルを、ただ優しい眼差しで見守っていた。
それから・・・・

しばらくして、バドがシドの部屋の前を偶然通りかかった。
すると、中からかすかにこんな声が聞こえてきた。

「フェンリル・・・ここも触ってごらん・・・・」
「え・・・?」
シドがフェンリルの手を取ると、それをあるところへと持っていく。
そこは・・・
「・・あ・・・シド・・・ダメだよ、そんなトコ・・・・」
「大丈夫、さあ、触って・・・」
「で・・でも・・・・」
シドに誘導されるまま、そこへと手を触れてみると・・・
「あ、熱い・・・それに、こんなに硬いんだ・・・・」
フェンリルはソレをそっと手で握ってみた。
するとシドが吐息をもらす。

「す、すごい!こんななるんだ?」
フェンリルは興味津々なようすで、ソレに指を這わせる。
「そう、その調子・・・なかなか上手いじゃないか・・・」
シドが吐息混じりに呟く。
フェンリルはさらにいろいろと指でソレを探ってみると・・・

「お前ら!2人で一体ナニやってるんだ!?」
溜まらずバドが扉を蹴破って中へと押し込んでみると・・・
そこには、シドに肩車され、手に電球を握って、それをソケットに収めようとしているフェンリルの姿が!
「兄さん?」
「バド?」
「あ・・・あれ・・・??」
てっきりシドとフェンリル2人でナニかしてるかと思いきや、なんのことはない。
ただ切れた電球を取り替えてるだけだったりしたのだ。

「ふー、電球ってあんなに熱くなるもんなんだな」
と手を擦りつつ呟くフェンリル。
ちょっと疲れたように吐息を洩らすシド。
「神闘士の中で一番小柄なフェンリルでも、やっぱり肩車すると意外と重かったな」
どうやら、フェンリルが「熱いとか」「硬い」とか言っていたのは電球のことで、
シドが吐息を洩らしていたのは、フェンリルを肩車して疲れたからのようだ。
それを、声だけで聞いていると、なんともいかがわしいイメージが沸いてきてしまったバドだった。


あとがき

全然バレンタインデーと関係なくなりましたね。
ただの声だけ聞くと勘違いネタシリーズです。
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