マッチ売りのミーメ
ここは極寒の地、アスガルド。
昼間でもクソ寒い雪の降る街角を、1人の少女(?)がマッチを売り歩いていた。
『マッチはいらないか?・・・暖かいマッチだぞ』
だが、少女の呼びかけに、足を止める者は誰1人いなかった。
『はあ・・・今日もマッチは1本も売れないか・・・これではまたオヤジに怒られる・・・』
少女ミーメは寒さでかじかむ手を擦りつつ、呟いた。
彼女のオヤジはとても厳しくて、マッチが1本も売れていないと、家の中にさえ入れてくれないのだ。
これで寒い中を野宿をすることが何度もあった。
『この分では、今夜も野宿か・・・』
ミーメは、寒さに震える手で、マッチを1本取り出すと、それに火を灯した。
『・・・暖かいな・・・・』
こんなマッチ1本では、とうてい寒さは凌げないが、それでもなにもないよりはマシだ。
ミーメは、しばらくそのマッチの炎を見詰めていた。
すると炎の中から、なにかがぼんやりと見えてきた。
それは・・・なんと、美味しそうなご馳走の数々だった。
ここ最近、なにも食べていなかったミーメのお腹は鳴った。
『・・・美味しそうだな・・・・だがしょせん、これは炎の中の幻想だ。実際に食べれるわけではない』
ミーメは知的に判断すると、ふうっとマッチの火を消した。
あんな幻覚を見ていたら、ますますお腹が空いてしまうからだ。
それから、急にどこからか、楽しそうな家族の笑い声が聴こえてきた。
今日はクリスマスだ。どこの家でも家族が勢ぞろいして楽しい団欒風景が繰り広げられている。
そんな中をただ1人、寒い街路でマッチを売り歩いているのは、ミーメくらいのものだろう。
ミーメは、そんな楽しそうな家族の光景を窓越しから眺め、なぜかふと寂しさを覚えた。
ミーメには家族はいなかった。
いまいるオヤジも、ミーメとは血のつながっていない他人だった。
だからミーメには、家族の温もりや暖かさなど知らなかった。
家に帰れば、オヤジはいつも酒をかっくらって、酔ってはミーメに暴力を振るう毎日・・・
正直ミーメはうんざりしていた。
いつの日にか、そんなオヤジに憎悪すら抱くようにさえなった。
だが、ミーメは知っていた。
今でこそ、こんなに酒びたりのどーしよーもないオヤジでも、一応ミーメの育ての親であるということに。
だから今までは我慢してこられた。
自分をここまで育ててくれたことには感謝しているからだ。
それでも我慢には限度というものがある。
ミーメはもうそろそろその限度を越えようとしていた。
つづく・・・
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あとがき
アスガルドメルヘン劇場です(どこが?)
この時期なので、マッチ売りの少女のパクリです。
今回も短くてゴメンなさい。 |
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