ゲームの達人


「皆さん、明日がなんの日かご存知ですか?」
と、ヒルダ様がお聴きするので、皆は顔を見合わせ、小首を傾げた。
「うふふ、やはり分からないようですね」
ヒルダ様はさも可笑しげに微笑まれると、こう仰られた。
「明日は・・・・クリスマスです」
「くりすます!?」
皆は初めて聞くその単語に、またもや疑問符を浮かべた。
その様子にヒルダ様はにっこり微笑むと、説明なされた。
「ええ。明日は12月25日、聖母マリアが馬小屋でイエス・キリストをお産みになった日ですわ。・・・確か」
「で、そのくりすますとやらが、どうかしたのですか?」
「そう、クリスマスといえば、恋人同士が精なる夜・・・もとい!聖なる夜を共に過ごす日と決まっておりますのよ。当然このアスガルドでもそれは同じです。ということで、クリスマスには各自恋人同士で性なる夜を過ごしていただきますわv」
(ヒルダ様、微妙に聖の字が違うのですが、まあ、台詞だからそんなこと知ったこっちゃねえ!なんでしょうね・・・)
私は・・・ジークフリートは、またヒルダ様のご病気が始まったことに、多少の頭痛を感じた。
まったくヒルダ様もヒマなお人だ・・・こんなくだらぬことをお考えになる暇があるのなら、もっとアスガルドの為になるようなことをお考えくださればよいものを・・・はう・・・
私の頭痛の種は、当分なくなりそうもない・・・・

「と、いうことで、では、各自恋人同士で過ごすこと!以上、分かりましたね?」
ヒルダ様のご命令(?)に、さすがに神闘士たちも半ば呆れながらも一応頷いた。
「よろしい、では解散してください」
ヒルダ様が突然私達神闘士を大広間にお呼びになられたのが、まさかこんなことだったなんて。

その後、フェンリルが私の側に来て、尋ねてきた。
「なあなあジーク、恋人同士って・・・・恋人いないやつはどうすんだ?」
そのフェンリルのナニも知らないであろう無垢な瞳を見返して、私は教えてやった。
「それはな、1人寂しく自分自身を慰めるんだ」
「?、自分自身を慰めるって・・・・??」
案の定フェンリルには意味が分からないらしい。
ふふふ・・・さもあらん。ま、ここは大人として、そういうこともきっちり教えておいたほうがよかろう。
フェンリルも一応(推定)16、7歳なのだからな。
「ふ、フェンリル。なんなら私が手取り足取り教えてやってもいいが、どうする?」
「え、ジークが教えてくれるのか?」
フェンリルは無邪気な笑顔で乗ってきた。
が、それを邪魔する者がいた。
「グルルル・・・」
ギングだ。
・・・野郎、やはり人の言葉が分かるようだな・・・
ギングはフェンリルを私から守るように、立ちふさがった。
「おいおい、どうしたんだよギング?、なにジークに怒ってるんだ?」
フェンリルが不思議そうにギングと私とを交互に見ている。
ちっ、こう邪魔がいては仕方ない。
私はフェンリルを手篭めにするのを諦めた。

それから、私は本命にアタックすることにした。
そう、私の恋人相手はもちろん決まっている。
それは当然、シドだ!
だが、シドは・・・案の定、バドの方を見つめては、なぜだか微笑んでいる。
シドよ・・・クリスマスの夜、お前は一体誰と過ごしたいんだ?
やはり、バドか・・・?
それとも、私か・・・?
いや、そのどちらでもないのかもしれんが・・・・

こうなったら、善は急げだ。
シドがフリーな今のうちに、さっさと手を打っておこう。
と、いうことで、私は早速シドにアプローチをかけることにした。

その夜、ここはシドの私室。
私はノックを2回。
これでシドが私だということに気づいてくれれば
がちゃ
トビラが開いて、そこにはシドが・・・
と、思いきや、一見シドそっくりの男。だが明らかにシドではないと私には分かる。
「ああ?、誰かと思えばジークかよ。で、なんの用なんだ、こんな夜更けに?」
そうぶっきらぼうに言い放っては、不機嫌そうにしている男。
明らかにシドではない。バドだ。
バドは髪もぼさぼさというか、普段のオールバックではなく、前髪も垂れているし、風呂上りなのかどうなのか、なぜか上着はYシャツでしかも前は肌蹴ている。
こんな格好で、私のシドの部屋で一体ナニをしていたんだ、この男!?
私は多少の憤りを感じたが、極めて平静を装い、バドに告げた。
「私はシドに用がある。悪いがシドを呼んでくれるか?」
「シド?、おい、シド、ジークがお呼びだぜ?」
ようやくシドのお出ましか?
と、私がさりげなく部屋の中を覗いてみると・・・・
なんと!?
そこにはシドやバドはともかく、なぜかハーゲンとトールまでいて、4人で1つの台を囲んでは、なにやらジャラジャラしているではないか!?
私は我が目を疑った。
そう、あれは確か・・・マージャンというやつに違いないからだ!
まさか、我ら神闘士ともあろうものが、マージャンなどにかまけているとは!
私はたまらず室内に入り込み、
「おい、お前たち、仮にヒルダ様に仕える神闘士ともあろう者が、そのような、マージャンなどというゲームに勤しむとは何事か!?」
「は?まーじゃん?、いや、これドンジャラだぜ」
「へ?」
そう、ハーゲンに指摘され、改めて牌を見てみると・・・・
なるほど確かにドラえもんの絵が書いてあるではないか。
そうか、それならよかろう・・・・・
て、よくなーい!!
いくらドンジャラでもマージャンっぽいのには違いない!
というか、なぜそんな古いものがあるんだ?
「なんだ、ジークもドンジャラがしたいのか、たく、しょーがねーなー」
「いや、誰もしたいなんて言っていないが・・・」
「まあ、そんな遠慮すんなよ。ちょうど1人欠員ができたんでな」
そう言ってバドが指し示す方向には・・・・
なんと、哀れパンツ1枚になったトールの変わり果てた姿が・・・!?
「ト、トール・・・・一体どうしたんだ!?」
「いやあ、ジーク、はっはっはっ、いやお恥かしい限りだが、こいつらにまんまと負けちまってな、いやー参った参った」
「へん、トールは見た目倒しでてんで弱えからな、楽勝だったぜ!」
と、酒をかっくらうバドの隣で、平然としているシド。
ハーゲンは自分の牌を見ながら、タバコまで吹かしている・・・・
って、おいおいおまえら、そういうキャラだったのか?
イメージダウンだぞ、というかファンが減るぞ。
「さあ、ジーク、トールの後釜として頑張ってもらおうか。当然負けたら脱いでもらうからな!」
「・・・・え?」
「なにとボケた面してんだよ、とうぜんマージャンっつったら脱衣マージャンに決まってんだろ!、他に賭けるもんもねえしな」
「・・・いや、お前ら、男脱がして楽しいのか?」
という私の問いに、今まで黙したままでいたシドが、ようやくその口を開いた。
「ふっ、当然だろ?、俺は男にしか興味ねえんだよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
え・・・今のって、確かにシドだったよな・・・、バドではなかったはず・・・なのにこの口調は・・・・もしかして・・・・・!?
私の背中に冷たいものが走り抜けた。
そう、それは明らかにシドだった。が、今はシドではないらしい。
シドは、彼は、2つの顔を持つ男なのだ!
つまり普段の優雅で気品に満ちた表の顔と、そのまったく逆の性質を持つ裏の顔とを・・・・
今のシドはまさしく裏のシドになっていたのだ!・・・なぜか。
「ふふん、ジーク、覚悟はできているんだろうな?」
裏シドが意味深な眼差しを私に向ける。
さらに酒臭いバドと、タバコをぷかぷか吹かしてるハーゲン。
な・・・なんて・・・・空間なんだ・・・ここは・・・・
とてもこんな現場をヒルダ様やフレア様にはお見せできない。
と、いうか、こいつらガラ悪すぎ・・・!
私は、正直こんな奴らと脱衣マージャンなどというゲームなどしたくはなかったが、この雰囲気では、断れない・・・かも?
うう・・・私としたことが、なぜにこんなに弱気なのだ・・・・?
「さあ、始めるか?」
というシドの合図に、バドもハーゲンも無言で牌をジャラジャラし始めた、そして情けないことだが、私も・・・・


なぜか、うやむやの内に脱衣まーじゃんに無理やり参加させられたジーク。
次回、どーなる、どーする、ジークフリート!?



あとがき

何ですかコレは?
いや、クリスマス小説を書こうかなって思って書いたら、なんだかこういう流れに・・・
というか、なぜにマージャン!?
しかも全然クリスマスと関係ないしー(泣笑)
追伸 実は私、マージャンのことほとんど知りません(ダメじゃん!)
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