シドとフェンリル
第二章
ここは、シドの部屋。
そこでは、
「シ、シド・・・!痛いよ!!」
「大丈夫だよ、フェンリル。さあ、身体の力を抜いて・・・」
「う・・うん・・・」
フェンリルはシドの言うとおり体の力をそっと抜くと、途端シドがフェンリルの中へとゆっくりとその切っ先を差し込んできた。
シドに刺されたところに、激痛が走り、思わずフェンリルはシドの手を掴んでしがみ付いてきた。
「あっ!シド、痛いよ!もうやめようよ!!」
「なに言ってるんだフェンリル。先にやりたいって言い出したのはお前の方だろう?」
「う、それは、そうだけど・・・、でもこんなに痛いものだなんて思わなかったんだもん」
「大丈夫だよ。痛いのは最初だけだから、すぐに慣れて平気になるよ」
「本当・・・?」
フェンリルがうるうるした瞳でシドを見上げると、シドは優しく諭すように微笑んだ。
「ああ、本当だよ。だからフェンリルもちょっと間、がんばってね」
「うん!俺、がんばるよ!」
フェンリルは元気に答えると、痛みに備えてぎゅっと目を瞑った。
そして・・・
「あっ・・・ん!」
シドをなんとか受け入れられた。
「そう、その調子だ」
シドもぐいぐいとフェンリルの中へと入っていく。
フェンリルはあまりの痛みに、その両目からうっすらと涙さえ浮かんでいた。
が、それでもフェンリルは健気に頑張った。
これも、シドのため・・・・
そう思えば、たとえどんな痛みであろうとも我慢することができる自信はあった。
そして・・・
シドがフェンリルの中に入り、鋭く貫通していく
「いたっ!?」
その鋭い痛みに思わずフェンリルが声をあげる。
するとシドが心配気にフェンリルの顔を覗き込んできた。
「ごめんよ、フェンリル。痛かっただろう?」
「ううん、大丈夫。これくらい平気だよ」
口ではそう言ったものの、その目は涙で潤んでいた。
それでも気丈に振る舞うフェンリルの様子に、シドは思わず微笑むと、そのおでこに軽くキスした。
これにはさすがのフェンリルも顔を真っ赤にして俯いた。
「どうしたの?フェンリル。顔が真っ赤だよ」
「うっ・・・な、なんでもない」
「そうかなあ?熱でもあるんじゃないのか?」
と、今度はフェンリルのおでこに自分のおでこをくっつけて熱を測るシド。
すぐ眼前に、目を閉じたシドの端正な顔が!
さすがにこれにはドギマギを隠せないフェンリル。
こんな至近距離から、さらにオレンジの瞳でシドに見つめられたら、もうフェンリルは夢心地を通り過ぎて、天にも昇る心地だろう。
本当に熱にうかされたように、うっとりしてしまうフェンリルの様子に、シドはおでこを離すと、今度は普通に手で熱を測ってみた。
最初からこうすればよかったのだが。
だが、どうやら熱はないようだ。
ただたんに顔が赤いだけのようだった。
それは痛みのためか?はたまた他の要因のせいか、それは分からないが。
「でも、本当によく耐えたな。偉いぞ」
と、フェンリルの頭を撫でてやるシド。
フェンリルも気恥ずかしそうにしながらも、照れているようだ。
「俺だって、こんぐらいの痛み、どうってことないぜ」
「そうか?それにしては、うっすら涙ぐんでるみたいだけど?」
というシドの指摘に、慌てて目をこすって涙を拭う。
そんなフェンリルの仕草に思わず笑みがこぼれるシドだった。
一方その頃、部屋のすぐ外では・・・
「あ、あいつら・・・・、またナニやってやがんだ?」
バドがなにやら心配気にドアに耳をそばだてていた。
先ほど、シドの部屋の前を通りすぎようとしたときに、偶然、フェンリルの悲鳴というか、なにやら痛がる声が聴こえてきたものだから、つい気になって中の様子を窺っていたのだ。
今のところは静かになったようだが、ここは兄として、シドとフェンリルの2人が中で一体ナニをしているのか非常に気になるところではあった。
が、どうやらなにも聴こえてこないので、多少気にはなってはいたが、そのまま通りすぎようとした、まさにその時!
「いや、痛いよぉ〜!!」
またしてもフェンリルの悲痛な叫び声が!?
これはいてもたってもいられないと、思わずバドは扉を蹴破って中へと乱入していた。
「お前ら、またナニやってんだよ!?」
見ると、そこにはフェンリルの耳になにやら針を通しているシドの姿が!
どうやらピアスの穴を開けていただけのようだ。
それをバドはナニかと勘違いしていたようだ。
「・・・兄さん・・・?」
「どうしたんだ?バド」
2人にきょとんとした顔で見つめられ、思わずバドは罰が悪そうにしていたが、
「いや、さっき部屋の前を通る時に、フェンリルの悲鳴が聞こえてきたもんだからよ。つい・・・」
「なんだ。そうだったんですか。実はフェンリルがピアスの穴を開けて欲しいというものですから。ほら、こうやって針で穴を開けてあげていたんですよ」
と、シドは針をバドに見せた。
フェンリルも耳を擦りながらも頷いた。
「そうなんだ。でもやっぱり多少は痛かったから、でも俺、泣いてないからな!」
そう気丈に振舞うものの、その目には多少涙が滲んでいたりする。
「そ、そうか・・・それならいいんだ。うん、邪魔したな!」
バドは、自分がまたしても変な誤解をしてしまったことに気づき、そそくさと部屋を後にした。
「兄さん、一体どうしたんだろう?」
「さあ?」
「それよりフェンリル。なぜ急にピアスの穴を開けたいだなんて思ったんだ」
「え?うん・・・それは・・・」
なぜか気恥ずかしそうにもじもじしながらも、フェンリルはシドの耳元をチラっと見て言った。
「俺も、シドみたいにピアスつけてみたかったんだ。だってなんかかっこいいじゃん!」
「そうか?」
「うん!そうだよ。それに俺もシドと同じのつけたいんだ。そうすればお揃いだろう?」
「なんだ、俺とおそろいのピアスをつけたかったのかい?フェンリルは」
シドが多少いじわるっぽく微笑むと、フェンリルは頬を染めて頷いた。
「うっ、そうさ。悪いか?」
「いや、全然悪くないよ」
シドはフェンリルの頭を撫でて、そしてくしゃくしゃにして微笑んだ。
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あとがき
なんだかよく分からないですけど、シドとフェンリルということで。
というか、この2人、なんかだんだんバカップルみたいになりつつあるような?
いや、気のせいでしょう。多分。 |
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