マイ・ハニ〜・スィーツ・ミーメv


(タイトル意味不明)
前回までのあらすじ

バレンタインデーに、シドとバド、2人から同時に怪しげなチョコレートを差し出されたミーメ。
果たして彼が選んだのはどちらのチョコレートなのか?


ミーメはバドの差し出した方のチョコレートを受け取った。
早速部屋に戻り、それを食べてみることにした。
乱暴に包まれた包装紙をなんとか引っぺがし、中から出てきたチョコレートはなんとも歪な形をしていたが、それでもあの不器用なバドが一生懸命作ってくれたものだと思えば、多少微笑ましい気もした。
それに見た目はともかく、肝心なのは味の方だ。
早速ミーメはバドの手作りチョコを一口齧ってみた。
味は、まあ悪くはないが、なんだかちょっぴり鉄臭いような気がしないでもなかったが、それでも気にしなければ全然大丈夫だった。
しばらくミーメはチョコを美味しく召し上がっていたが。
すると・・・突然。
なんだかだんだん体が熱く火照ってくるではないか!
それに妙な気分にも襲われる。
どうにもこうにもいてもたってもいられなくなり、ミーメは熱く疼く体を持て余していた。
なぜか息まで激しく荒くなってくる。
「・・・ハァ・・・ハァ・・・・」
もうどうにも止まらない。
徐々に熱い衝動に駆られていくミーメ。
自分でも自分自身をコントロールできなくなっているようだ。
「な、なんだ?この気分は・・・?」
今だかつて無い不思議な衝動に、ミーメは戸惑いを隠せないでいた。
なんだか無性に・・・・やりたい気分に駆られる。

その時、バドは・・・
ミーメに無事、媚薬入りのチョコを食べさせることに成功したはずなのだが、なんだか複雑な心境でもあった。
「くっ、俺としたことが!例え媚薬なんていう姑息な手段を用いてミーメをモノにしたとしても、それは一時的にミーメの体を自由にしただけに過ぎない。俺が本当に欲しいのは、ミーメの心だ!!」
ようやく自分の愚かな行為に気づき、今でも遅くないとミーメからチョコレートを返してもらおうと彼の部屋の前まで来ていた。
本当は、チョコを受け取ってもらった時に一緒に部屋に入れて欲しかったのだが、ミーメに「他に何か?」という目で睨まれては、大人しく引き下がるしかなかった。
だからバドには、今のミーメに起こってる異変には気づかなかったのだが、多少媚薬のせいでおかしくなってるかもしれないということだけは覚悟していた。
そしてバドは意を決っすると、ミーメの部屋のドアを叩こうとした、まさにその時!
そのドアが勢いよく開き、そこにはミーメの姿が!
「ちょうどいいところに来たね、バド?」
と、ミーメは、まるで獲物を見つけた獣のような視線でバドを射竦めた。
さすがのバドも、尋常ならざるミーメの異変に気づいて、身動き取れないでいる。
彼の予想していたミーメは、媚薬のせいでとても色っぽく、目もうっとりして、頬もほんのり桜色に紅潮しているだろうと考えていたのだが、
果たして今のミーメは、それとはまるで正反対といってもいい有様だった。
目は爛々と輝き、口元には妖しい微笑みを湛え、まるで品定めでもするかのような妖しい視線でバドを見下ろしている。
その赤い瞳で見つめられただけで、なにか得体の知れない空寒いものを背中に感じるバド。
そう、それはまさにヘビに睨まれたカエルのような状態だった。
「さあ、バド。君がこのチョコレートにいったいなにを入れたんだかそれは分からないが、私をこんなにした礼はたっぷり君の体で晴らさせてもらうとするか?」
「・・・え?」
ミーメの謎の台詞に、バドも彼になにが起こったのか分からなかったが、とにかく媚薬の効果ではないことだけはなんとなく分かった。
その証拠に、ミーメはいきなり竪琴を取り出すと、妖しい旋律を奏で始めたからだ。
そうそれは、まごうことなき「ストリンガーレクイエム」の旋律そのものだった!
さらにその竪琴から弦のようなものが突如バドに襲い掛かり、彼の体をぐいぐい締め付けていくではないか!
「あーははは!もっと苦しめ!もっともがけ!!もがけばもがくほど、それは君の体を締め付けていくだろう!!」
まるで狂ったように笑い声を上げるミーメ。
「くっ!?」
さすがに焦るバド。
ミーメはそんな苦しむバドを見ては、恍惚の表情ともつかぬ妖しい笑みを浮かべて、舌なめずりまでする始末だ。
まさに今のミーメは殺戮狂そのもののようになってしまっていた。
「さあ、バド。もっと私を楽しませてくれないか?大丈夫、すぐに殺したりはしないさ。じっくりゆっくりいたぶってから除々に殺してあげるよ」
今のミーメは、まるで拷問を楽しむかのような感じさえする。
バドを痛めつけて苦しめては、その様を見るのが楽しいようだ。
バドも、そんな豹変してしまったミーメに多少の驚きを隠せないでいたが、今はそれよりもなんとかこの弦から逃れるのが先決だった。
そうこうしている内にも、弦はますますバドの体を締め上げ、首も締め付けていき、息も苦しくなってきた。
このままでは本当に命の危険さえある。
だがミーメは本気でバドを殺そうとしているのか、一向に弦を緩める気配はないし、逆にさらに強く締め付けてくる。
「さあ、バド。そろそろ君にも見飽きたから、死んでもらおうか?」
ミーメもバドに飽きてきたらしく、最期の仕上げにと、ピンと張った弦にそっと指を触れさせ、それを弾こうとして・・・・
その時だ!
部屋の扉が勢いよく開くと、そこには、なんと!
血相を変えたシドとジークフリート、それにアルベリッヒの姿まであった。
「ちっ!間に合わなかったか!?兄さん、大丈夫ですか!?」
シドが急いで兄に駆け寄ると、首を締め付けている弦をなんとか緩めようとしている。
ジークフリートもミーメに近寄ると、なんとかストリンガーレクイエムを止めさせようとしていた。
「ミーメ、もういいだろう?バドのことを許してやってはどうだ?」
だがミーメは宥めるジークフリートを一瞥すると、邪魔するな!という感じで睨みつけるだけだった。
「おい、アル。元々はお前が原因でこうなったんだ。そんなところで突っ立ってないでなんとかしたらどうだ?」
というジークフリートの呼びかけに、アルベリッヒもやれやれというようにミーメに近づくと、彼の真正面に回りこみ、
いきなり!
ミーメにキスしたではないか!
いや、キスというよりは口移しでなにかを飲ませた感じだったが。
そのアルベリッヒにいきなりキスされた衝撃で、ミーメもバドを締め付けるのを中断して目を白黒させていた。
アルベリッヒからなにかを喉に流しこめられて、その違和感に、思わず咳き込む。
「・・・ごほっ、ごほっ!・・・はっ!私は今までいったいなにをしていたんだ?」
辺りをきょろきょろ見回しては、どうやら事情が飲み込めない感じのミーメ。
「ふう、やっと正気に戻ったようだな。」
ジークフリートも正気に戻ったミーメを見てほっと一安心だった。
バドも大した怪我もなく無事なようだ。
それを見て、シドも安堵の吐息を洩らした。
「ん?なぜ君たちが私の部屋にいるんだ?」
ミーメはどうやらなにも覚えていないのか、不思議な顔で他の皆をきょとんと見ていた。
バドはそんな元に戻ったミーメを見て、喉をさすりつつも、彼に謝っていた。
「すまない、ミーメ。俺が贈ったチョコのせいで、お前は・・・」
「・・・・?」
まだ事情が分からず疑問符を浮かべるミーメ。
それを見て、ジークフリートが口を挟んだ。
「いや、それはどうやら違うみたいなんだ。そうだろ、アルベリッヒ?」
と、アルベリッヒに話を振ると、彼も苦笑を浮かべた。
「おい、どうゆうことだよ?」
堪らずバドが聞き返すと、アルベリッヒも渋々ながら口を開いた。
「どうゆうことも、こういうことも、俺がお前たちに渡した薬は、媚薬や惚れ薬なんかじゃなかったんだよ。ちょっとからかって別の薬を渡したのさ」
と、まるで悪びれた様子もなくネタばらしをするアルベリッヒ。
「なんだとう!?」
さすがに驚きを隠せないバドと、目を伏せるシド。
どうやら彼ら双子は、ミーメをモノにしたいがためにアルベリッヒから薬を貰っていたのだが、それがそもそもの今回の事件の原因だったらしいのだ。
バドは媚薬を、シドは惚れ薬を、それぞれアルベリッヒから貰ったのだが、それは違う薬を掴まされたようだ。
「ふっ、そもそも人の心を薬で盛って手に入れようなんてふしだらな考えなんか持つから、こういうことになるのさ」
あくまで自分のことは棚に上げて、双子を非難するアルベリッヒ。
もっとも、彼の言うコトにも一理あるので、反論できないのが悔しいが。
「・・・で、俺に媚薬と称して渡したあの薬は一体なんだったんだ?」
ミーメがまるで殺戮狂のように豹変してしまうほどの恐ろしい薬だ。
もちろん媚薬なんかではないだろうが。
「ああ、あれは一種の興奮剤さ。でもある意味、媚薬みたいなもんじゃないか」
「どこがだよ!?俺はそのせいで危うくミーメに殺されかかったんだぞ!?」
「なに?私は君を殺そうとしていたのか?」
ミーメも、今まで自分がなにをしていたのか薄々感じ取ったようだ。
「いや、俺も悪かったわけだし、別にミーメのせいってわけじゃねえよ」
「だが、私は君を殺しかけたのだろう?」
薬で興奮していたとはいえ、仲間を殺そうとしていたことに気づき、ミーメは多少の罪悪感を覚えた。
「・・・やはり私は、1人でいた方がいいのかもしれない。また、大事な人をこの手で殺してしまうことになるくらいなら・・・・」
「おいおいミーメ。だからお前のせいじゃないって言ってるだろ?そもそもの原因はアルの奴なんだからよ」
「なぜ俺が悪くなるんだ?元々はお前たちが妙な薬などチョコレートに入れなければこんなことにはならなかっただろうに」
「うるせえな。てめえが変な薬なんざ渡す方が悪い!」
「ほう、では媚薬は渡してもいいというのか?ある意味、興奮剤よりもヤバイ薬だと思うがな?」
「・・・うっ!それは・・・・」
「なんだ、バド?私に媚薬を飲ませようとしていたのか?」
「い、いやあ、別にそういうことじゃねえけど・・・・・」
ミーメに見つめられ、思わず言葉に詰まるバド。
まさか本当に媚薬をチョコに混ぜて食べさせようとしていたなど、口が裂けても言えない。
「まあまあお前たち、もうそれくらいにしたらどうだ?済んだことをうじうじ考えていてもしょうがないだろう?」
さすがは神闘士たちのリーダーであるジークフリート。
このまま不穏な空気になることを避けて、平和解決に持ち込もうと口を開いた。
「そもそもの原因は、お前たち双子やアルベリッヒも悪いが、ミーメ、お前にも多少は責任があるんだぞ」
「なに?私に?」
「ああ。お前が誰か1人に絞らないから、シドもバドもこんなに苦しんでいるんだろう?」
というジークフリートの指摘に、双子もドキっと焦った。
(うっ、ジークめ、余計なことを!)
確かにミーメのことは好きだ。
そりゃもう、チョコに媚薬や惚れ薬を入れたくなるほどに!
だが!そんなことをしてもミーメが本当に自分のことを好きになってくれるわけでもないし、ましてや逆に嫌われてもおかしくないことをしてしまったのだ。
それをミーメには知られたくない。
それを知ってか知らずか、ジークフリートは続けた。
「この際聞くが、ミーメ、お前には誰か好きな人はいるのか?」
いきなり確信に迫るジークフリートの質問に、ミーメは・・・
ただ、黙って首を振るだけだった。
「そうか・・・・」
ジークフリートもそれ以上はなにも言わずに、ミーメもなにも語らなかった。

そうして、無事事態も収まり、皆はそれぞれ家路につくことになった。
ミーメに軽く別れを言うと、ジークフリートは去り際に、シドとバド、両方の肩を叩いては、
「ま、がんばれよ」
と小さくエールを贈った。

こうしてチョコレート騒動は無事収まるかに思えた。

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