幸福の王子
配役:王子=シド
ツバメ=ミーメ
むかしむかし、ある街の中央広場に、とても美しい王子の像が立っていました。
その全身は金で覆われ、瞳や装飾品は色とりどりの宝石で彩られた、それはもう綺麗な王子像です。
街の人達は、そんな王子の像を褒め称え、毎日たくさんの人が王子像を観に集まってきました。
冬も真近に近づくある日のことです。
1羽のツバメが王子の像の足元に舞い降りてきました。
ツバメは冬を越すために、暖かい南の島へ行く最中でしたが、途中で力尽き、一休みするために舞い降りてきたのです。
『・・・悪いが、今夜一晩、ここで休ませてはくれないか?』
ツバメは王子の像に言いました。
王子も快く快諾してくれました。
『いいだろう。だが1つお願いがあるのだが、聞いてくれるか?』
『なんだ?、私にできることならなんでもしよう』
『そう言ってくれると助かる。実は、この道をずっと行った先に、とても貧しい家族がいるのだが、彼らに俺の瞳の宝石を、届けてやってはくれないか?』
『なんだ。そんなことならお安い御用だ。私に任せておけ』
そしてツバメは、王子の瞳から宝石をくちばしで取り外すと、それを貧しい家族の住む、窓辺へと運んであげました。
『ありがとう。これであの家族も、あの宝石を売ったお金で、なにか美味しいものが食べれるだろう』
そう言って王子は、嬉しそうにツバメに微笑みかけました。
それからも王子は、ツバメに自分の体に付いている宝石やら、金粉やらを、街の貧しい人達の元へと運ばせて、彼らの喜ぶ顔をみて、嬉しそうに微笑みました。
でも、そんなことを続けている内に、王子の全身の金粉は剥がれ落ち、宝石も全てなくなり、かつての美しい外見が、見るも無残に変わり果ててしまいました。
街の人達は、そんな王子像を誰も見なくなってしまいました。
もうすぐ冬も近づいてきます。
王子はツバメに言いました。
『ありがとう。お前のおかげで、俺ももうなにも思い残すことはなくなったよ』
『いや、私の方こそ、君のおかげでとても温かかった、体も、心も・・・・』
王子は、ツバメが運んでくれた宝石や金粉で、貧しい人々が幸せになってくれることが嬉しかったのです。
そしてツバメも、そんな王子の側で休み、雨風を凌がせてもらい、かつ優しい心に触れることで、体も心も温かかったのです。
それから、雪がちらちらと降るようになりました。
王子はツバメに言いました。
『もうすぐ冬も来る、お前は早く南国へお行き・・・』
しかしツバメはこう言いました。
『・・もう雪も降ってきた・・・・今から飛んでももはや間に合わないだろう。ならば私は、君の側にいたい』
『俺の側に・・・?』
『ああ、君の側はとても暖かいんだ。雪で凍えた体も、君の側にいるだけで解けてしまう・・・』
ツバメは王子に寄り添いました。
王子もツバメを優しい眼差しで見下ろします。
雪が2人の上に静かに降り積もっていきます。
それでも2人は、寒さや冷たさなど微塵も感じませんでした。
なぜならその体は、互いの温かい心に触れ、とても暖かかったのです。
こうして、王子とツバメの魂は、一緒に天へと昇っていったのです・・・・
そして翌朝、
金粉や宝石などなにもなくなり、雪に覆われた王子像と、その足元で、冷たくなって倒れている小さなツバメの姿を観て、そこでようやく人々は気づきました。
王子に付いていた宝石や金粉を、ツバメが貧しい人の元へと運んでくれていたことに。
街の人たちは、そんな王子の像に感謝し、ツバメを丁重に葬ってあげました。
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あとがき
復帰第1号は、幸福の王子です。
こういう優しい童話は好きです。
あと、ドラマの「幸福の王子」も好きでした^^ |
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