いきなり現れた黒サガに捕まってしまったのは、やはりカノンだった。
ガシッ!
『フッ、カノンよ、どこへ行く気だ?せっかくこの兄と久しぶりに対面したというのに、もっと楽しいことしようじゃないか?』
黒サガに腕を掴まれ、カノンは戦慄した。
『うわあああ、離せ!!この変態野郎!!!』
『ふふ、兄に向かって変態とはな?面白い、そういう反抗的な弟には、たっぷりお仕置きしてやらんとな!』
黒サガは、逃げるカノンを強引に引き寄せると、押し倒して上に乗っかった。
『て、今この場で犯る気かよ!?他の黄金連中が見てるかもしれねえじゃねえか!?やめろ!!!』
『フフ・・・それこそ立派に性教育ができるではないか!よかったな、そのお手本となれるのだから、カノンよ』
『よくねええ!!!!どけえええええ!!!』
カノンは必死に黒サガをどかそうとするが、黒サガにはびくともしない。
『そら、もっと嫌がれ!抵抗してみろ!!その方が燃えるというものだ!!うわーはははは!!!』
黒サガはカノンの下半身を丸出しにして、足を抱え上げると、いきなり突っ込んできた。
『!!!!』
そのあまりの痛みに、声にならない悲鳴を上げるカノン。
黒サガが思いっきり突くたびに、カノンの身体もその反動で上下に揺らされる。
『・・・いっ、痛てえっ・・・・・!!』
カノンは容赦なく突いてくる黒サガを受け入れつつも、痛みで涙が出そうになるのを必死にこらえていた。
こんなことで泣く訳にはいかない。それこそ黒サガの思う壺だ。
『ふふふ、どうしたカノン?そんなに気持ちいいのか?』
苦痛に歪むカノンの表情を見て、さらに黒サガの欲情に火が点いた。
『んな訳、ねえだろ!?はやく抜け!!』
『ふっ、そうせっつくな。本番はこれからだ!』
言うと、いきなり剥き出しのカノンのモノをグッと掴みあげて、扱き始める。
『はっ!?う・・・・!?』
途端、黒サガに突っ込まれてる痛みと、モノを刺激されてる快感が同時に全身を駆け巡る。
そんな抗えなくなってきたカノンを一瞥して、さらに黒サガは口元に笑みを浮かべた。
『ふん、淫らな奴だ。男の、それも実の兄のモノを突っ込まれ、そんな恍惚としたいやらしい表情を浮かべるとはな』
黒サガの嘲笑にも、しかしカノンはなにも言えなかった。
現に気持ちイイのは確かだった。
これが、黒サガではなく、サガだったのならばと、そう思う自分までいるほどだ。
体は確かに兄のものなのだから、それはあながち間違ってはいないのだが。
『・・・ほう、もう先走りが出ているではないか?、本当にお前は淫らな奴だな』
黒サガにモノを嬲られ、感じて思わず反応してしまっている自分自身にどうしようもなく抗えず、カノンはひたすら快感と痛みに耐えるしかなかった。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
と、いう夢を見た。
「カノーーーーン!!!!」
バッ!
ラダマンティスはカノンの名を呼び、思わず寝ていたベットから跳ね起きていた。
「ハアハアハア・・・・、なんだ、夢か・・・・?」
辺りを見回し、それが夢だと分かり安心するも、体中びっしょりと汗をかいていた。
「くそっ!それにしても、なんて夢だ・・・・・」
カノンに密かに?想いを寄せているラダマンティスにとっては、カノンが黒サガに犯される夢などまさに悪夢そのものだった。
「・・・・・まてよ。まさか、これは正夢だということはないだろうな?」
なぜかふいに、そんな思いに捕らわれ、いてもたってもいられなくなったラダマンティス。
「そうだ!きっとそうにちがいない!くっ、こうしちゃおれん、早くカノンを助けに行かなければ!」
なんの根拠があるのか勝手にそう決め付けると、さっそくラダマンティスは愛しのカノンの元へと向かうことにした。
彼は急いでベットから飛び降りると、着ていたパジャマを脱ぐのももどかしく破り捨て、ワイバーンの冥闘衣を装着する。
髪型も、眉毛もばっちり整え、香水も全身に振り掛け、いざ出発というまさにその時!
背後でふいに何者かの気配を感じて、とっさに彼は振り返った。
するとそこには・・・・?
一方、その頃、カノンはというと・・・・
「リーチ!」
「ちっ!先をこされたか」
じゃらじゃらじゃらじゃら、何人かの仲間でまーじゃんなどしていた。
「おい、カノン、まさかイカサマなんざしてねえだろうな?」
「ああ?俺がんなせこいマネするわけねえだろ。そういうデスこそなんかしてんじゃねえか?」
「ふん、俺をなめてもらっちゃあ困るな。俺はいつでも正々堂々と勝負してるぜ!」
「嘘つくなよ、卑怯者のくせに」
「そうさ、シュラのゆうとおりだ、君はいつでも卑怯だからな」
「なに言ってやがるアフロ!お前だって似たようなもんだろう?」
「失敬な。君なんかと一緒にしてもらっては困るな。」
「あーうるせえうるせえ、お前ら、口喧嘩するならゲームの邪魔だ。あっち行け!」
カノンに、しっしっと手を振られて、それまで口論していたデスマスクとアフロディーテは渋々口を閉じた。
「よし、それでいい。じゃ、続きすっか?」
と再びまーじゃんに興じようとしたまさにその時!
突如彼らの真上上空から、なにか巨大なものが舞い降りてくるではないか!
それは黒い大きな翼を広げて、真っ先にカノンの元へと舞い降りてきた。
『カノーーン!!逢いたかったぞ!!」
が、
「ゴールデントライアングル!!!」
間髪入れず放たれた、まーじゃんを邪魔されたカノンの怒りの必殺技によって、あっけなく消失するラダマンティス。
それをぽかんと見ているカノン以外のまーじゃん仲間たち。
「くそっ!あの野郎、せっかくのゲームを台無しにしやがって!!!」
カノンはイラ立たしげにそう吐き捨てると席を立った。
「今日は、もう辞めだ。帰るぞ」
言ってきびすを返すととっととその場を後にしてしまった。
後に残された、デスマスク、シュラ、アフロディーテの黄金年中組(別名・カノンの悪友たち)は、
「カノンの奴、いつになく機嫌悪いな」
「そりゃそうさ、もうすぐリーチだっていうのに、突然の闖入者にそれを邪魔されたんだからね」
「それにしてもあの怒りようはただものじゃないぞ。有無を言わせずいきなり異界に飛ばしてしまうのだからな」
「確かに」
となにやら囁きあっていた。
一方その頃、カノンの怒りによって魔の三角地帯に飛ばされたはずのラダマンティスはというと・・・
「・・・・はっ?ここは?」
目を覚ますとそこは、一面の花畑だった。
「む、ここはもしや・・・あの世か・・・・?」
噂に聞く天国の花畑かと思い、辺りをきょろきょろ見渡せば、
「おい、お前。ここでなにをしている?」
突如、背後から声をかけられ、思わず振り向くと、そこには・・・?
「?」
竪琴を抱えた1人の青年が立っていた。
そしてその背後には、なぜか下半身が石になっている女性の姿が。
「オルフェ・・・・その方は・・・・?」
女性は不安げに青年に声をかけた。
「だいじょうぶだよ、ユリティース。相手が誰であろうと、君には指一本触れさせない。君はわたしが命に代えても守るからね」
と、青年も女性を安心させるように優しく微笑んだ。
一方その頃カノンは・・・・
大きな溜息などついていた。
正直、毎度毎度のラダマンティスの猛烈ラブアタックにうんざり気味のカノンだった。
「くっ、あの野郎・・・・、なんでこう毎回俺のとこに来てはちょっかいかけやがって、正直うぜえ」
なんとかラダマンティスの興味を、誰か他のことに向けることはできないか?
そう考えていた時だった。
「そうだ、あいつを冥界から出さないようにすりゃ、聖域には来れねえんだよな。」
しばし考えていたカノンは、あることを思いついた。
「よし、さっそくパンドラに相談だ」
そしてここは冥界、
いつものように大きなハープを奏でるパンドラの元へ、珍しい客人が尋ねてきた。
「おや、珍しいこともあるものだ。まさかお前がわたしの元を尋ねてこようとはな」
パンドラは意外そうに微笑んだ。
「して、わたしになにか用事があるそうだが、なんだ?言ってみよ?」
「・・・相変わらず尊大な女だな。まあいい。さっそく命題に入るが、正直ラダマンティスのやつをなんとかして欲しいんだ」
客人・カノンは単刀直入にそう切り出した。
「ふむ、やはりそうか。ココ最近ラダマンティスの様子がおかしいとは気づいておったが、やはりお前に・・・・」
と言って小さく笑うパンドラ。
「笑い事じゃねえんだよ!こっちはあいつのせいでおちおち寝てられないんだ」
「ほう、とうとう寝込みでも襲われたか?」
「いや、別にそういう訳じゃねえけどよ。というかそんなことされたら俺は確実にあいつの息の根を止めるけどな!」
躊躇なくそう言い放つカノンに、若干眉をひそめてパンドラが忠告する。
「なぜそんなにラダマンティスを嫌う?彼はお前のことを好いているのであろうに」
「いや、男に好かれても別に嬉しくはねえしな。それに俺には・・・・」
と言いかけてあわてて口を閉ざす。
「まあとにかく、あいつをこれ以上聖域に近づけないで欲しい」
「ふむ・・・・」
カノンの頼みに、しばし黙考してから、パンドラは、告げた。
「なら、交換条件を出そうではないか。お前の頼みを聞くかわりに、お前にもわたしの頼みを聞いてもらう。それでいいな?」
「ふーん、どんな頼みかはしらねえが、これでラダの野郎が俺の目の前に現れなくなるのなら、その条件、飲もうじゃねえか」
「ふふ、それなら話は早い。では交渉成立だな」
言ってパンドラは、口元に妖艶な笑みを浮かべたのだった・・・・。
つづく
次回:果たしてパンドラの頼みとはなんなのか?
そしてカノンは、ラダマンティスから逃れることはできるのか?
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『カミュ! もうすぐクリスマスだな!』
宝瓶宮にいるカミュの元へ、ミロが遊びに来て、開口一番そう言った。
『・・・そうだな』
カミュはクールに頷いた。
『そこでさ・・・俺と、クリスマスを一緒に過ごさない?』
ミロは、思い切ってカミュを誘ってみたが、
『すまんが、ミロ。クリスマスは毎年、氷河とアイザックと一緒に過ごすことになっているのだ』
『なんだ、そうなのか・・・』
カミュにそう言われ、残念がるミロ。
そんなミロの様子を見て、カミュは付け足した。
『だが、イブなら空いているぞ?』
『本当か!?』
途端に喜ぶミロ。
『ああ、だからイブなら、お前と一緒に過ごせる』
『やった!! イブはカミュと一緒に過ごせるんだな!?』
素直に喜ぶミロを、カミュは冷めたクールな目で見ていた。
そして、クリスマスイブ当日・・・
カミュはミロのために料理を作ってやることにした。
『ミロ。シベリア料理と、フランス料理、ついでにロシア料理、ジャパニーズ料理どれが食べたい?』
『うーん、カミュが作ってくれるもんなら、俺はどれでもいいよ!』
『・・・・そうか』
カミュはミロをちらりと見ると、
『では、ギリシア料理を作ってやろう』
『え、カミュ、ギリシア料理作れるのか?』
『ミロ、お前の為に勉強したんだ。』
『カミュ・・・俺の為に・・・・!!』
感激するミロ。
『ミロ、どうだ、美味いか?』
『ああ、カミュの作った料理ならなんでも美味いよ!』
『そうか・・・』
素直に喜ぶミロの様子に、満足するカミュ。
さすがは2人の弟子を育て上げただけのことはある。
料理の腕は確かだ。しっかり主夫しているカミュ。
そんな料理上手のカミュを見て
『カミュ・・・俺と、結婚してくれないか?』
いきなりプロポーズするミロ。
突然のことに多少驚くカミュだが、
『・・・2人の子持ちだが・・・それでもいいのか?』
『ああ、かまわんさ!』
『分かった・・・だが、氷河とアイザックの意見も聞きたい。それまでいいか?』
『ああ、待ってやる』
早速カミュは、次の日のクリスマス。
氷河とアイザックに報告した。
『実は、昨夜、ミロから告白されたんだが・・・・お前達の意見を聞きたい』
『こ、告白って、愛の告白ですか、カミュ?』
『そうだ、結婚してくれと言われた・・・・』
『そ、そんな・・・!?』
ショックを受ける弟子2人。
『あ、あの単純単細胞のミロが、俺達の父親になるなんて・・・!!』
『・・・・別に父親になる訳ではない・・・・』
『でも、カミュと結婚するのでしょう?』
『まあな』
『・・・・・』
もちろん、2人の子供は大反対だった。
『俺は、カミュさえいてくれればそれでいい。別に、父親などいらない』
『オレも、カミュを別の男(ミロ)に取られるくらいなら、いっそオレの手で・・・・!!』
思わず問題発言を言おうとするアイザックの口を慌てて抑え、氷河が弁解した。
『アイザックも、カミュをミロに取られるくらいなら、また海底神殿に家出すると言っています!』
『・・・ふむ・・・』
またアイザックが家出するのも困りもののカミュは、なんとか2人を宥めることにした。
『氷河に、アイザックよ、なぜそんなにミロを嫌う?』
「『・・・別に・・・』」
弟子2人は同時にそれだけ呟いた。
「いや、別に、では分からんだろう?もっと具体的に理由を述べよ?」
カミュに先生質問されては、答えないわけにはいかなかった。
『俺たちは、別にミロのことを個人的に嫌いとか、そういうんではないのです。でも、』
と、言葉に詰まる弟子2人。
正直、大好きなカミュをミロに取られるということが気に食わないのだが、それを素直に言ったところで、カミュに笑われてしまうかもしれない。
まさにそれは、再婚するお母さんに新しいお父さんができて、なかなかなじめない子供そのものの心境だったからだ。
さすがにそんなことは恥かしくてカミュには知られたくなかった。
ずっと押し黙る弟子2人の様子にカミュもやれやれというように
「まあ、いい。とにかくそういうことなので、わかって欲しい。もし意見があるのなら言うがいい」
「カミュ・・・・」
弟子2人はただなにも言えず、その夜は悶々として過ごすことになった。
2段ベットの下に寝ていた氷河は、上に寝ているはずのアイザックに呼びかけた。
「なあ、アイザック。起きてるか?」
「・・・・ああ」
「昼間のカミュの話、どう思う?」
「どうって、もちろん俺は断固として反対だ。カミュを誰か他の男に渡すなんて我慢ならない」
「・・・いや、そういうことじゃなくて、
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『シドには、ユリの花がよく似合うな』
『俺はユリか・・・?』
『ああ、清楚で可憐で穢れが無い、無垢なユリだ』
『そうか・・・。そういうジークフリートは、薔薇だな』
『私は薔薇か』
『ああ、豪華で気高く美しい。そして、トゲがある・・・』
『フッ、言ってくれるな』
シドの皮肉に思わず笑みがこぼれるジークフリート。そこへ、
『・・・・なあ、俺はなんなんだ?』
いきなりバドが口をはさんだ。
『お前、いたのか・・・?』
『俺ははじめからいたわ!!お前がいきなり俺とシドの間に乱入してきたんだろうが!!』
『フッ、そうだったかな?』
『なに、しらばっくれてるんだよ!!』
『兄さん、やめてください! ジークフリートも喧嘩しないで!』
いきなり喧嘩を始めた2人を、あわてて止めに入るシド。
実は、バドとシドが会話してる時に、いきなりジークフリートが2人の間に割って入って、そのままシドと会話を続けていたのだ。
そしてバドはのけ者扱いされていた。
『フッ、さっきの話だが、バドには所詮、トリカブトがお似合いだな!』
ジークフリートは皮肉を込めてそう言った。
『とりかぶと? なんだそれは?』
『知らないのか?今度、食べてみるといいぞ!』
ジークフリートのブラックジョークに、バドは気付いていないのか。
『ジークフリートも、兄さんをからかうのはよしてくれ』
たまらずシドが仲介に入った。
なぜこの2人は、すぐ喧嘩をしてしまうのか?
『なあ、シド、とりかぶとってなんだ?』
なおも気になるのか聞いてくるバドの問いに、正直答えていいものかどうか・・・
『兄さん、トリカブトは綺麗な花ですよ・・・多少毒気がありますけどね』
『そうなのか・・・』
『はい。まあ、兄さんに似てるといえば似てるような気もしますが・・・・』
複雑な心境のシド。
『ふっ、そういうことだ。分かったら私とシドの邪魔はしないでくれ』
『そもそも邪魔をしたのはお前の方だろう!?』
またもや険悪になるジークフリートとバド。
シドは、そんな2人を呆れて眺めていた。
そこへ・・・
『あらあら、3人とも、楽しそうになにを話しているの』
どう見ても、楽しそうに見えない3人に近づいてくる人物がいた。
それは・・・
ヒルダとフレアの姉妹だった。
まさに花のように美しい姉妹の登場に、ジークフリートもバドも喧嘩をやめた。
ヒルダはジークフリートに。
フレアはバドに。
それぞれ近づくと、そっと耳元になにかを囁いて行った。
それを不審に見て、バドが訊いてきた。
「ヒルダ様とフレア様はなにを耳打ちしていったんだ?」
「それはね、兄さん・・・・」
「いや、バドには関係ないことだ。そうだろシド?」
シドが答えようとするのをすかさず遮ってジークフリートが言った。
「なんだよ?気になるじゃねえか!」
「ふん、所詮正式な神闘士ではないお前には話しても無駄なこと。分かったら |
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アスガルド紅鯨団
つづく?
この日を堺に、アスガルドからバドの姿が忽然と消えた。
彼の行方を知る者は誰もいなかった。
悲嘆にくれる、シド、ミーメ、ジークフリートの3人は、口々にそれぞれを邪推しはじめていた。
「兄さんがいなくなったのは、誰かが兄さんを無理やり拉致・監禁したからに違いない。そうなんだろ?ジークフリート?」となぜかジークフリートに疑いの視線を投げかけるシド。
「なぜわたしが!?というかそんなことせんわ!!」とっさに否定するジークフリート。
「フッ、それはどうかな?」とミーメ。
「そういうミーメこそ一番妖しいのではないか?」
「なぜそう思う?」
「兄さんをストリンガーレクイエムで縛って・・・・あ、あんなことや、こんなことを・・・・!」
「ふ、それもいいかもな?」
「「え!?」」
ついあらぬことを想像してしまったシドの言葉に同意するミーメに思わず絶句するシドとジークフリート。
「ま、まさか本当にミーメが兄さんを無理やり縛って拉致監禁!?」
「ふふ・・・」
シドとジークフリートの疑い眼差しに、ミーメはただ小さく笑うだけだった。
一方、バドは、ホモのいない新たな新天地を求めて旅をしていた。
「とりあえずアスガルドはもうダメだな。あそこはホモだらけだからな」
バドは、もう当分はアスガルドには帰らないつもりでいた。
「さて、これからどこに行こうか?」
思い余ってとっさにアスガルドから飛び出したはいいか、次に行くべきところなどなにも考えてもいなかった。
「うーん、この際、青銅聖闘士や、奴らより強いという黄金聖闘士たちのいるギリシアの聖域にでも行ってみるか?」
こうしてバドは、とりあえずギリシアの聖域へと向かうことにした。
そして、ここは聖域・サンクチュアリ。
の、黄道12宮の玄関口に、バドは立っていた。
が、極寒のアスガルド生まれのアスガルド育ちのバドにとって、ここギリシアはあまりにも暑すぎた。
体中汗だくで、頭は朦朧として、息もなんだか苦しい。
「あち〜、死ぬ〜〜」
・・・ばた
とうとうバドは、日射病なのか熱中症なのか不明だが、その場に倒れ伏してしまった。
・・・・・
・・・・・・?
どれくらい意識を失っていたのだろうか?
彼は、ふと目を覚ますと、そこはなぜだかとても涼しかった。
いや、涼しいというよりは、寒い。というか冷たい。
まるで凍えるほど冷え冷えとしている。
うっすら目を開くとそこは・・・?
「って、冷てえと思ったら氷の中じゃねえか!?」
そう、彼はなぜか氷漬けにされてしまっていたのだ。
「おや?お目覚めですか?」
彼が氷を内側からドンドンするのに気づいたのか、紫色の髪のやけに落ち着いた男性だか女性だか分からないが、麻呂眉の多分男だろうが、声をかけてきた。
「どうやら生きていたようで安心しましたよ。あなたを最初見つけた時はすでに死んでいるものとばかり思っていましたからね」
悪びれた様子もなくそう言うと、その麻呂眉男は氷に手を当てて呟いた。
「しかし困りましたね。てっきり死んでいると思っていましたから、こうしてカミュに氷の棺を作ってもらったはいいのですが、生きてるとなるとここから出してさしあげなければなりませんね」
「当たり前だ。早く出してくれ!」
しきりに内側から氷をどんどん叩くバド。
「早く出してあげたいのはやまやまですが、実はこの氷の棺は、ライブラの聖衣の武器でしか壊すことはできないのです」
「なら早くその武器でこの氷の棺を壊してくれ」
「ところがあいにく、今その武器はここにはないのですよ」
「じゃ、どうすんだよ!?でれねえじゃねえか!?」
「ふふ、そうかもしれませんね。お気の毒様」
「・・・・なっ!?」
ムウの薄情な一言に思わず絶句するバド。
(ちっ!冗談じゃねえぜ!こんなところで死ねるかよ!?)
バドは焦った。
これはマジでヤバイかもしれない。
はるばるアスガルドを離れて、こんな遠くの地でひとり寂しく死んでいくことになろうとは。
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